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診療科のご紹介

泌尿器科

女性泌尿器科外来の紹介

大阪中央病院泌尿器科では泌尿器科外来での「女性のための泌尿器科外来」と「女性泌尿器科ウロギネセンター」で水・金の午後に女性の疾患専門外来を開設しています。
女性泌尿器科ウロギネセンターは女性の骨盤底の不具合が原因となる次のような疾患に特化した外来です。
女性泌尿器科ウロギネセンターで治療できる疾患。

  1. 1.骨盤臓器脱;膣からいろいろな臓器が脱出してくる疾患群で性器脱とも言います。脱出してくる臓器により、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤などと呼びます。
  2. 2.各種の尿失禁;尿もれの多くは骨盤底の緩みによっておこります。
  3. 3.子宮癌、直腸癌など骨盤内の手術の術後の排尿障害。

これら以外の疾患は「女性のための泌尿器科外来」で診察します。

ここでは当科での診療をご紹介する前に、まず女性に特有の泌尿器科疾患の解説をしたいと思います。

女性特有の泌尿器科の疾患・主な女性の泌尿器科疾患
最近性差に基づく医療ということに関心が寄せられていますが、男性と女性で形態や機能の著しく異なっている部位として下部尿路や骨盤底があげられます。ここでは女性特有の疾患として、骨盤底の障害や老化によっておこる尿失禁と骨盤臓器脱、尿道が短いことによって女性におこりやすい膀胱炎について述べることにします。
女性の骨盤底筋とインテグラル理論
骨盤底筋と聞いても、一般にはなじみのない言葉ですが、女性泌尿器科のキーワードの一つなので、簡単にお話しておきます。骨盤底筋は前方の恥骨と後方の尾骨との間にあるハンモック状の筋肉群を言います。元々、四つ足歩行していた頃には尻尾を振ったりするのに使われていた筋肉群ですが、人間が二足歩行を始めたことから骨盤の底に腹部臓器の重みがかかるようになりそれを支える役目を果たすことになったのです。
これらの筋肉群や靱帯などの支持組織が協力して、膀胱、子宮、直腸など骨盤内臓器を支えるだけでなく、種々の臓器や神経、筋肉の高度な協調が必要とされる蓄尿や排尿、排便という機能に重要な役割を果たしています。
インテグラル理論によると、膣はその中心にあり前後をそれぞれ恥骨尿道靱帯と仙骨子宮靱帯によってつられたハンモックとして尿道を支えています。この膣ハンモックを前上方に引っ張る骨盤底の筋肉群(恥骨尾骨筋の筋肉部分)、下方に引っ張る骨盤底の筋肉群(肛門縦走筋)、後方に引っ張る筋肉群(肛挙筋プレート)の三つの筋肉群があり、バランスをとっています(図1)。
尿漏れや性器脱、尿意切迫感など女性の下部尿路症状はこのハンモックの障害(骨盤底の緩み)によって起きるというインテグラル理論に基づいて最近の尿失禁や骨盤臓器脱の治療が考えられています。女性泌尿器科の疾患の多くはこの骨盤底の緩みや断裂といった障害が原因となっていると考えられています。

図1 インテグラル理論

骨盤底はなぜ緩むか
妊娠、出産が最も大きな原因となります。肥満による体重の負荷、更年期におこるエストロゲンの減少、加齢による筋肉の脆弱化などがあげられます。
骨盤底の障害部位と疾患や症状

前方領域、つまり恥骨尿道靱帯や尿道を吊っている膣の前壁に障害があると尿失禁や便失禁が現れ過活動膀胱の症状が起こります。障害が進むと尿道が脱出する尿道瘤になります。
中央領域、つまり膣の前壁に障害がおこると膀胱の支持が傷害され、排尿困難、頻尿、過活動膀胱の症状が現れ障害が進むと膀胱が膣から脱出する膀胱瘤になります。
後方領域、即ち仙骨子宮靱帯や膣の後壁に障害がおこると排尿障害、過活動膀胱、下腹部痛などの症状が現れ、子宮脱、直腸脱、小腸脱などの性器脱が出てきます。

インテグラル理論によると、このように多くの女性泌尿器科の疾患が骨盤底の靱帯や筋肉の障害によっておきるとされており、その治療はこれら骨盤底のハンモックを修復するのが主眼となります。

女性の尿失禁

国際尿禁制学会(International Continence Society)では「尿失禁とは、不随意の排尿」と定義しています。噛み砕いて言えば、排尿しようと思っていないのに尿が出てしまうものを尿もれとしています。症状は同じ尿もれでも、原因が異なれば対処の方法も治療法も異なります。ここでは女性の尿失禁の大部分を占める腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁およびその両者の症状を併せ持つ混合型尿失禁についてとりあげましょう。

1.腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、重いものを持った時にもれる。
女性の尿失禁の半数以上を占めるのがこの腹圧性尿失禁で、出産直後や閉経期以後の女性に多く、おなかに力が入ったときに尿がもれます。つまり、咳やくしゃみしたとき、重いものを持ったり、持ち上げたりしたとき、立ち上がろうとしたとき、長時間歩いた時などにもれます。出産経験がある人(特に2人以上)(骨盤底が傷つく)や肥満の人によく見られ、更年期や閉経をすぎると症状がひどくなり(女性ホルモンが減少する)ます。この尿もれは骨盤底の筋肉が弱まり尿道を支えられなくなることが原因でおこります。腹圧性尿失禁に尿道がぐらぐらと不安定なことによる尿道過可動タイプと尿道括約筋に不具合がある内因性尿道括約筋不全タイプという二つのタイプがあり名古屋第一赤十字病院の加藤先生がそれぞれ、ぐらぐら尿道、すかすか尿道と名付けました。
2.切迫性尿失禁
トイレに行きたいと思ったら我慢しきれずもれる。
水に触れたり水の音を聞いたりするともれる尿失禁。神経に障害のある場合(脳梗塞、パーキンソン病など排尿筋過反射によるもの)とない場合(原因は骨盤底の緩みなど種々のも)がある。
3.混合型尿失禁
腹圧性と切迫性の両者の症状を併せ持つタイプの尿失禁であり閉経期以後に発症する尿失禁にはこのタイプが多いことが特徴です。
タイプ別の割合
滋賀県在住の成人女性約1000人のアンケート調査の結果を図2に示します。腹圧性尿失禁の割合が非常に多いことがわかります。

女性の尿失禁 タイプ別の割合

●尿失禁の治療
腹圧性尿失禁の治療
骨盤底のハンモックを修復することが基本になります。骨盤底筋体操は正しく行えば3か月くらいで効果があります。手術としては、メッシュテープを挿入し中部尿道を軽く支えるTVT手術やTOT手術が低侵襲で効果が優れているのでゴールデンスタンダードとなっています(図3)。薬物療法としてはβ−交感神経刺激剤であるスピロペントがありますが、長期に連用する場合には副作用に注意する必要があります。

TVT手術やTOT手術

切迫性尿失禁の治療
抗コリン薬による薬物療法が第一選択となります。これに緩んだ骨盤底を再建することを目的とした骨盤底筋体操などの理学療法、排尿を我慢する習慣をつけることによる機能的膀胱容量の増加をめざした膀胱訓練などの行動療法など加わり治療の骨子となります。
混合型尿失禁の治療
まず抗コリン薬により切迫性の部分を治療して後に腹圧性の要素が残れば、その治療を追加することになります。抗コリン薬により尿失禁が消失する場合も少なくありません。

骨盤臓器脱

Olsenの報告(1997)によると女性の生涯罹患率は11.1%で日本の40歳以上の女性人口の10%が骨盤臓器脱に罹患しているとすれば国内の患者数は約350万人となります。私の勤めている病院の女性泌尿器科ウロギネセンターには、この1年間で少なくとも500人の骨盤臓器脱の新規患者が受診していることを考えあわせると非常にありふれた病気であることが類推されます。

骨盤臓器脱の種類
膣から脱出してくる部分や臓器により尿道瘤、膀胱瘤、子宮脱、小腸瘤、直腸瘤などと呼ばれます(図4)。

性器脱の種類

骨盤臓器脱の原因
Dulancyは膣ハンモックの支持をLevelT、LevelU、LevelVと分け(図5)、LevelTは膣の前上方への挙上、LevelUは側方への牽引、LevelVは尿道や会陰部の支持と定義しています。骨盤臓器脱は膣ハンモックのそれぞれの部位の障害が原因とされています。LevelTの障害で子宮脱や小腸瘤、子宮摘出後の膣脱症が、LevelUの障害で膀胱瘤や直腸瘤が、LevelVの障害で尿道瘤がおこることになります。さらにその原因は尿失禁と同様に妊娠・出産、肥満、女性ホルモンの減少、加齢にともなう筋肉や靱帯の弱まりにあると考えられています。

膣ハンモックの支持

骨盤臓器脱の頻度
骨盤臓器脱を多い順に並べと、膀胱瘤>子宮脱>直腸瘤、となります。
骨盤臓器脱の症状
膣から何かピンポン球のようなものが出ている、入浴時に手に何かが触れる、股の間に何かが挟まっているような気がする、などから始まり、ひどくなると脱出した膣壁が下着に擦れて出血したり、痛みで歩行すら困難になったりします。
骨盤臓器脱の診断
どの部位がどれだけ脱出しているかを診断することが必要で、何種類かの記載法が用いられて来ましたが、最近では国際的に最もよく用いられているのはPOP-Qシステムという記載法です(図6)。骨盤臓器脱の診察に最も適した時間帯は、臓器の脱出しやすい午後の遅い時間帯で、さらに砕石位で脱出を認めない場合には、立位で軽く足を開いた状態で腹圧をかけてもらうことにより臓器が脱出しやすくなります。

POP-Qシステム

骨盤臓器脱の治療
理学療法
軽い場合(例えば臓器が膣口より頭側に保たれている場合)には骨盤底筋体操などの理学療法や生活上の注意(後述します)により対処します。臓器が膣口より体外に脱出している場合(例えばPOP-Qシステムのgrade3、4)にはペッサリーによる治療や外科的治療の対象になります。
ペッサリー療法
リング状のペッサリーという器具を膣に挿入して子宮を支持する治療法です。ペッサリーは異物なので留置により膣に炎症を来たし、膣壁のびらんなどがおこります。炎症を繰り返しペッサリーが膣壁に埋まり込んで抜けなくなったケースにも時々遭遇します。自己脱着出来る患者さんや、手術までの一時的な治療法として位置づけると治療の良い選択肢と考えることが出来ます。ただし後ほど紹介するような低侵襲手術が可能となった今では、手術リスクのない患者さんに目的をはっきりさせずベッサリー療法を続けることは患者さんのQOLにとっても得策ではないと考えます。
手術療法
骨盤臓器脱の根本的な治療は外科手術によって膣ハンモックを修復することにつきます。
これまでの手術
例えば子宮脱(LevelTの障害)には子宮自体に問題が無くとも子宮を摘出してから残った膣の上端部(膣円蓋)を靱帯などの組織に固定して引き上げる治療を、膀胱瘤(LevelUの障害)には弱くなった膣の前壁を縫縮する手術が一般的であったが、脆弱な組織を用いて再建することから再発率が高い(30%以上)ことが問題でした。
最新の手術
メッシュを用いる低侵襲手術―Tension-free vaginal mesh (TVM)手術―
2000年にフランスで始められたこの手術は、子宮脱であっても子宮自体に問題がなければ子宮を温存できること、大きなメッシュ自体で骨盤底にハンモックを再建する(図7)ため再発がきわめて少ないことなどの利点を持ち、低侵襲で優れた手術です。国内ではまだ数えるほどの施設でしか実施されていませんが、数年のうちに骨盤臓器脱の治療のスタンダードになると考えられます。
以上骨盤底の障害による尿失禁と骨盤臓器脱は非常に多い病気で高齢者においても治療が可能なので、あきらめる前に是非一度は専門医の診察を受けたいものです。
TVM手術について詳しくはこちら>

TVM手術のメッシュによるハンモック再建

膀胱炎

女性の約半数の方が一生に一度は罹患したことがある病気が膀胱炎です。なぜ女性に膀胱炎が多いかと言えば、男性で20cm以上ある尿道が女性ではわずか4cmしかなく、尿道を経由して膀胱に細菌が侵入しやすいのが大きな理由です。ここでは多くの女性がかかったことのある急性単純性膀胱炎と最近多くの患者さんがいることがわかってきた間質性膀胱炎についてお話ししましょう。

急性単純性膀胱炎
原因
細菌が尿道を経由して膀胱に入ることと膀胱内で増殖して炎症をおこすことによって発症します。原因菌はほとんどの場合大腸菌です。では細菌が膀胱内に侵入すれば必ず膀胱炎になるかといえばそうではありません。膀胱の粘膜には細菌を殺す機構が備わっているので、体調が悪くなければ膀胱炎を発症することは稀です。体の免疫機構が弱った状態、例えば感冒などのウイルス疾患にかかっているときや月経中であるとき、過労や睡眠不足の時などに細菌が侵入してくると膀胱炎を発症しやすくなります。ではどんなときに細菌が侵入するかと言えば、オーラルセックスを含めた性交渉、月経中などで陰部が不潔になりやすい時などが考えられます。
予防
ですから膀胱炎にならないためには、体調のすぐれない時には性交渉は控える、月経中には無理をしないなどの注意が重要です。一般には排尿を我慢すると膀胱炎になると考えられているふしがありますが、排尿を我慢することで膀胱に細菌が侵入することはなく膀胱炎になることはありません。むしろ初期尿意(約100−150cc)での排尿を繰り返していると機能的膀胱容量が減少して、頻尿となります。逆に頻尿や過活動膀胱と呼ばれる病気の治療には排尿を我慢する習慣をつける膀胱訓練という行動療法を行っているほどです。排尿はすこし我慢する習慣をつけた方が良いのです。
治療
抗生物質による治療が有効です。最近の抗生物質は強力なので特殊な耐性菌を除けば2,3日の服用で細菌は消失します。一般には膀胱炎になれば水分を多くとることが推奨されているようですが、水分を多めにとるのは三日間で十分です。細菌がいなくなった後は、むしろ排尿回数が少ない方が膀胱の粘膜の再生や再感染の予防には良いのです。
繰り返す単純性膀胱炎
このような膀胱炎を繰り返す患者さんの中には尿の出口である外尿道口が膣に非常に近い構造を持った方がおられ、このような方が性交渉をすると外尿道口が膣の中にまくれ込み、細菌が非常に侵入しやすい形になっていることがあります。簡単な手術で治療することが出来ますので専門医に相談すると良いでしょう。
間質性膀胱炎
聞き慣れない病名かも知れませんが最近、予想以上に患者数が多いことがわかってきた慢性進行性の膀胱炎です。病気の存在を知らないと決して診断することができない疾患なので是非記憶の片隅にとどめておいてください。
症状
典型的な症状は尿が貯留したときの膀胱痛ですが、尿貯留時以外の痛み、それも尿道痛、会陰部痛、下腹部痛などを訴える場合もあります。軽症の方では、頻尿や尿意亢進などで受診される方も多く、過活動膀胱などと症状が似ています。
検査所見
尿所見に異常が認められないことがほとんどで、泌尿器科に受診しても「膀胱炎ではありません」「異常ありません」などと言われ、医療機関を転々とする患者さんや、精神科に紹介されてしまう患者さんもおられます。
診断
麻酔をかけた状態で膀胱鏡で膀胱内を観察しながら膀胱に水を80cm水柱で注入し膀胱を拡張します。その後水を排出してゆく過程で膀胱粘膜から出血してくることを確認することで診断がつきます。この膀胱水圧拡張が同時にこの病気の初期治療になります。
原因
詳細は不明ですが、想定されているメカニズムとしては膀胱の粘膜を透過して炎症が間質に及びアレルギー反応を起こし、そこでおこった炎症が局所に留まり遷延するといったことが考えられています。
臨床経過
炎症が遷延し消長を繰り返しながら次第に悪化してゆくと言った経過をたどり、膀胱は萎縮していきます。20歳台で発症し、最初は頻尿程度の症状であったものが、消長を繰り返し40―50歳で典型的な膀胱痛を来すようになり医療機関を訪れるといった経過をとります。
治療
これまで高度先進医療として行ってきましたが、2010年4月より保険診療として施行可能となりました。薬物療法として国内では保険診療で認められた薬はありませんが、抗アレルギー剤であるトシル酸スプラタンストや各種漢方薬、消炎鎮痛剤、抗不安薬などが用いられます。ヘパリンやDMSOといった薬品の膀胱内注入なども試みられています。生活上の注意としては、食事内容に注意することにより症状の軽快が得られることがあります。
その他
間質性膀胱炎と同じ症状を来すものとして膀胱上皮内癌がある(約1%の頻度)ので、水圧拡張時に病理組織検査をしてチェックする必要があります。
以上、間質性膀胱炎について簡単にお話しました。頻尿を訴えて受診される患者さんで抗コリン薬の無効な方の半数近くは間質性膀胱炎の可能性がありますので、こういう疾患があることを記憶にとどめておいてください。
膀胱鏡写真 (膀胱鏡写真:左図の水を注入する前は正常に見えた膀胱粘膜が、膀胱内への水の注入・排出により右図のように著明な点状出血を生じ、蓄尿時の激烈な膀胱痛の原因となります。)
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