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泌尿器科
前立腺癌
 

■ 腹腔鏡下前立腺全摘術

  前立腺がんの根治が期待できる最も有効な治療は、前立腺をすべて摘出することです。前立腺の摘出手術は、「がんが前立腺内にとどまっている状態」の方に行ないます。前立腺がん手術の基本は前立腺全摘手術ですが、前立腺全摘術には従来から行われてきた開放手術、腹腔鏡下小切開手術、腹腔鏡下手術、ロボット補助腹腔鏡下手術の4手法があります。当院は拡大視野で丁寧な手術ができるなど優れた利点がある腹腔鏡下前立腺全摘手術 を中心に行っています。
 

(1)前立腺全摘術(従来の開放手術)
  下腹部に20cmくらいの皮膚切開を入れ、前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を吻合します。手術後は膀胱にカテーテル(柔らかい管)を挿入し、1週間程度で尿道造影検査後にカテーテルを抜きます。 術後合併症として勃起障害が起こる可能性があります。これは前立腺の周辺に勃起に関わる神経があるため、手術の際に神経が傷ついて起こるものです。また手術の際に前立腺と尿道括約筋をはがすため尿失禁が起きますが,徐々に改善します。最近では手術法が進歩しているため、こうした後遺症のリスクは減ってきています。
   

(2)腹腔鏡下前立腺全摘術
  腹腔鏡下手術とは内視鏡で行う手術の事で、お腹を大きく切らずに小さな穴を5〜6箇所開けて直径5〜12mmのトロカーと呼ばれる筒状の器具を通して行う、負担が少なくてすむ手術です。傷の治りが早く術後の痛みが少ないため術後回復が早いことが特徴です。また従来の手術に比べて出血が少なく、内視鏡で拡大して細かい手術操作を行えるため尿失禁や勃起障害の頻度も軽減するメリットがあり普及しつつある術式です。ただし出血が起こった場合は開放手術より止血に手間取ることもあります。腹腔鏡手術では操作が難しい場合、出血や他臓器損傷などのときには、従来の開放手術に切替えます。 良好に経過すれば術後10日前後で退院可能です。
 
 

■ 起こりうる合併症

  以下の合併症は前立腺摘除に伴うもので、開放手術・腹腔鏡手術ともに認められるものです。
   

(1)出血・他臓器の損傷
  手術前に自己血を貯血し、それでも足りないときは日赤の血液を輸血することがあります。また、前立腺周囲の腸や尿管などを傷つける可能性があり、その場合には適切に処置するため開放手術への変更が必要になる場合もあります。特に直腸や膀胱は前立腺に接しているため約3%の確率で損傷することがあります。膀胱損傷は尿道カテーテルを長期に留置すれば直り、直腸損傷の場合、一般的には1週間程度の絶食で対応します。万が一直腸損傷がひどい場合、再手術や人工肛門を造設しなければならない場合もあります。
   

(2)術後の腸閉塞・腹膜炎
  術後に腸が癒着し、再手術が必要になることがあります。小さな腸の傷に気がつかなかった場合、後で腹膜炎となり再手術が必要になる場合があります。
   

(3)後の創部離開・創感染・創ヘルニア
  創部感染のため傷の処置が必要になることもあります。創ヘルニアは筋膜がゆるんで、腸が皮膚のすぐ下に出てくる状態で、再手術が必要になることがあります。開放手術より腹腔鏡手術では起こりにくいと考えられます。
   

(4)術後の肺梗塞
  おもに足の血管中の血液が凝固し、これが血管の中を流れて肺の血管を閉塞する、重大な合併症です。予防するために、手術中には下肢に弾性ストッキングを巻きます。
 

■ 腹腔鏡手術に特有の合併症

(1)皮下気腫
  気腹のために用いる二酸化炭素が皮膚の下にたまって不快な感じのすることがありますが、数日で自然に吸収されます。陰嚢が膨らむこともありますがこれも数日で自然に吸収されます。
   

(2)ガス塞栓
  二酸化炭素が血管の中に入って肺の血管が通らなくなるもので、まれではありますが危険な合併症です。
   

■ 術後の排尿状態について

  前立腺は、頭側は膀胱と、足側は尿道とつながっており、尿道側には前立腺に接するように尿道括約筋が存在していますが、その位置や形態は個人差があります。やむを得ず括約筋を前立腺から剥がさなければならない場合があり、術後に尿失禁(おなかに力を入れると漏れる腹圧性尿失禁)になります。これに対しては、骨盤底筋群体操や尿道を締める薬などで対応します。尿失禁はすぐに改善しなくても術後1〜2年かけて徐々に回復することもあります。(術後1年で約95%の患者さんがパッドなしで生活されています) 前立腺と精嚢を切除した後に膀胱と尿道を吻合しますが,その吻合部が狭くなり尿が出にくくなるため、処置が必要になることがあります。
   

■ 術後の性生活について

  前立腺を摘出するとき精管を切断するため術後は射精できません。しかし神経温存し勃起可能な場合は射精感を感じることが出来ます。前立腺の左右に勃起神経が走行しています。癌が左右どちらかにだけある場合や神経から離れているところにある場合は神経を温存することが出来ます。ただし前立腺が周囲と癒着しているときには温存できないことや温存できた場合でも電気メスの影響などにより神経が傷つけられてしまうこともあります。神経の改善速度はゆっくりしており1〜2年かけて回復する例もあります。神経温存しても勃起能力が回復しない場合はバイアグラ、レビトラやシアリスなどの薬物療法で対応します。
 
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