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診療科のご紹介

泌尿器科

男性不妊症

不妊症とは
一般に健常な男女間で通常の性生活があって1年妊娠が成立しない場合を不妊症としています。子供を持つことを希望するカップルの10〜15%がこれに該当するとされています。昔は女性側の原因が多いとされていましたが、最近では男性側の因子も約半数を占めていることがわかってきました。(図1)

図1不妊症の原因

男性不妊症の原因
精子は精巣(睾丸)の中の精細管で作られ、精巣上体管に集まります。そして精管を伝って精嚢と前立腺で産生された精液に混じり、射精というかたちで体外に(あるいは膣内に)放出されます。(図2)これらの過程に障害が生じると男性不妊症となります。すなわち精子形成障害(精子が作られていない、精子の数が少ない、精子の動きが悪い)や、精巣上体管や精管が詰まって精子が出てこない(閉塞性無精子症と言います)、また前立腺の感染などで精液に影響が生じるなどの要因があげられます。一方、射精できない、性交自体ができない(勃起障害)ということも男性不妊症につながりますが、これらは男性性機能障害という別の概念でくくられます。(男性性機能障害の稿を参照してください。)

図2男性不妊症の原因

大阪中央病院泌尿器科 男性不妊外来
先ほど述べたように不妊症は女性の問題とされることが多かったこともあり、男性側因子の研究、治療は女性側に比べて遅れをとっている感は否めません。しかしそのなかにあって当科の男性不妊外来は我が国の先駆け的存在であります。約四半世紀前に現大阪大学医学部泌尿器科奥山明彦名誉教授が当科にその専門外来を開設して以来、同大学との協力関係のもと最先端の治療に取り組んできました。
男性不妊外来受診のながれ
まず精液の状態(精子の数、運動性、精液自体の性状)を確認するのが診察の基本となりますので、受診時に精液を採取していただきます。特に運動性は射精後時間がたつと落ちてきますので来院してからの採取をお願いしていますが、どうしても病院で採ることができない方やすでに他院で無精子症と診断された方はご相談ください。そして精液の内容を確認後、精巣の大きさやその周囲に異常がないかを診察させていただきます。また造精機能に影響を及ぼすホルモンの血液検査も行います(この結果はすぐに出ないので次回の診察時の説明となります)。これらを総合的に判断して治療法を選択していきますが、一般に不妊治療は長期戦となります。精子が精巣内で作られるのに約2ヶ月半かかりますので、なんらかの治療を行ってもその効果判定は3ヶ月以降となります。また精液の状態は不安定なので良かったり悪かったりを繰り返すこともしばしばあります。最終的な目標は妊娠を成立させることなので、奥様の状態(年齢や健康状態)も重要なポイントになります。したがって当科では近隣の女性不妊クリニックとも緊密な協力関係を築いています。
非閉塞性無精子症患者への福音 −顕微鏡下精巣内精子採取術−
顕微鏡下精巣内精子採取術における精細管
女性の不妊治療が格段に進歩することにより、精子の数が少なかったり運動率が悪くても人工的な手段(人工授精、顕微授精)で妊娠することが可能になっています。もちろん自然妊娠が理想なのは論を待たないので、まず精子の数を増加させたり運動率を上げるような治療を行っています。
しかし精子そのものが精液中にない場合は問題となります。特に重篤な造精機能障害があり精巣内で精子が作られていないとされるケース(非閉塞性無精子症)はかつて絶対的不妊症と言われて、自身の子供を持つことが不可能とされていました。そのなかにあって精巣内のごく一部でわずかに精子を作っているケースも存在することがわかってきました。精巣の中は精細管という精子を作る細かい束がぎっしりつまっている構造を有していますが、非閉塞性無精子症の患者さんではそのほとんどが細くしなびています。そのなかにあってやや太く濁っている構造のものを顕微鏡で見出して、精子の獲得を目指します(図3)。当科ではこの顕微鏡下精巣内精子採取術の経験がすでに100例を上回っており、精子の獲得率は40〜50%位となっています。妊娠に至るまでにはこの精子を使ってさらに顕微授精を行う必要があるため、最終的な成績は上記の数字よりも下がりますが、可能性がゼロであった時代から考えると大きな進歩と言えるでしょう。
自分での治療が可能なホルモン補充療法 −頻回の通院が不要に−
図4精巣におけつホルモン調整
精子は精巣(睾丸)で作られることは先ほど述べましたが、精巣に精子を作るように刺激するホルモンが頭部(視床下部、下垂体)から出ています。FSH、LHというホルモンですが、これらは同時に男性ホルモン(テストステロン)の分泌も刺激しています(図4)。そしてFSH、LHの低下により精巣での精子形成不全や男性ホルモン分泌低下をきたす病態があります。この場合、FSH、LHの作用をもった薬剤を投与していく治療法を行っていきますが、1週間に1〜2回の注射が必要となり、そのたびごとに医療機関を受診する患者さんの負担はかなり大きなものでした。
しかしこの薬剤の注射を自分で行うこと(自己注射)が認められるようになりました。当科ではこの自己注射薬の臨床治験(市販される前に実際の患者さんに同意の上で使用し、有効性や問題点を調べる試験のこと)の段階から係わっており、市販薬として認可されると同時に患者さんへの自己注射指導を開始しています。この方法により安定期に入った患者さんでは数ヶ月ごとの通院ですむようになり、その負担は大きく軽減されています。働きざかりの年代の方が多いだけにこれも大きな朗報と言えましょう。
精索静脈瘤は、一般男性の10%、男性不妊症患者の30%以上に認めます。代表的な3種の治療である精巣静脈高位結紮術、顕微鏡下精巣静脈低位結紮術、腹腔鏡下精巣静脈結紮術のすべてに当科は対応しており、近隣の不妊クリニックの先生方から多くの患者さんをご紹介いただいています。
顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)も不妊クリニックとタイアップして行っており、採取された精子を用いて不妊クリニックでICSI (卵細胞質内精子注入法)による治療が行われます。

顕微授精
写真1
顕微授精

精索静脈瘤の造影写真
写真2
精索静脈瘤の造影写真
顕微鏡下精巣静脈低位
写真3
顕微鏡下精巣静脈低位
結紮術
(顕微鏡で観察しながら、精巣静脈を結紮します。)
腹腔鏡下精巣静脈結紮術
写真4
腹腔鏡下精巣静脈結紮術
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